【PANERAI avvelenamento】Vol.12 ~ムーブメントの話~
こんにちは。
スリークの飯田です。
めちゃくちゃ久々のPANERAI avvelenamentoのコーナーです!!
気が付いたら今年の1月以来。
そんなわけでして、リハビリも兼ねてパネライについての復習から
そして、ムーブメントについて書いていきたいと思います。
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さて、パネライですが
連載を見てくれている方は何となくそれぞれのイメージが出来ていると思いますが
皆さん『パネライ』って聞くとどんなイメージを持ちますか?
『イタリア海軍の特殊部隊』?
『でかい時計』?
『リューズガードが特徴』?
人それぞれ印象が違うのかも知れませんね。
パネライって奥が深く、知れば知るほど素晴らしいブランドだと実感します。
この素晴らしさを多くの人にわかって欲しい!と思う反面、
コアなファンだけの秘密にしておきたい!!という思いもでてきちゃうブランドです(笑)
ブランドの歴史的な背景や
製品作りに対する価値観や姿勢
商品のクオリティ
など、知れば知るほど深みにハマっていくブランドなのです。
(↑こんな人たちが着けていた時計です)
見た目が同じようなデザインが多いので
パッと見た目だけで判断している人はそのパネライの奥深さをまだ知らないと思います。
実際にパネライを持っている方でも、デザイン性だけで選んで、
その後パネライの奥深さを探求しないと1本で満足してしまいます。
しかし、探求してしまうと・・・・
もう色々とパネライを追い求めてしまうんですよねぇ・・・・
ちなみにデザイン的なことを言うと
基本的なデザインは
『ラジオミール』
『ルミノール』
の2型に分類されてしまうわけで、
その2型のみでブレることなくずっと作って商売をしているのはカッコいいと思います。
(↑ヴィンテージのパネライたち)
そして何十年たっても
誰が見ても『パネライ』とわかるデザインになっているのが素晴らしいです。
他の色んなブランドを見たって2型だけっていうのはないですし、大幅なモデルチェンジをするのが常です。
BREITLINGで言ったらクロノマット系とナビタイマー系しかないのと一緒だし
TAGHeuerで言ったらモナコ系とリンク系しかないのと一緒。
そう考えると凄いなぁと思うわけです。
そんなパネライの現在に至るまでの経緯を今一度、軽く歴史を追ってご紹介したいと思います。
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パネライは創業1860年。
1860年というと時計ブランドで言えばTAGHeuerと一緒です。
皆さんの知っているブランドBREITLINGは1884年、IWCは1868年、ZENITHは1865年が創業。
そう聞くと凄く老舗のように聞こえますよね。
でもパネライが時計を作り始めたのは1936年からなのです。
じゃあそれまでの70年間は何をやっていたのかと言うと、パネライは元々はイタリアの時計店だったんですね。
そして時計の販売だけでなく修理を行う工房も兼ね備えていた同店はイタリア初の時計学校も兼ね備えていました。
時計の修理などの技術的な分野でも長けていたパネライはやがてイタリア海軍に照準器などの精密機器を納入するようになりました。
そして、海軍の更なる要望に応える為
パネライは新たな夜光塗料を開発しました。
ラジウムをベースとしたその夜光は『ラジオミール』と名づけられ、特許を取得しました。
↑1936年プロトタイプ
そして1936年、ついにパネライはイタリア海軍から時計の製作を依頼されるのです。
上の写真が1936年当初のプロトタイプ。
当時は時計を作る技術がなかったパネライ。
取引先であるロレックスと契約を結びパネライが求めるケースやムーブメントを作らせました。
ロレックスが他社のためにこのように時計を作ってたというのも驚きですが、
それだけパネライがロレックスに対して影響力のある存在だったのだと思います。
なぜ、イタリア海軍がパネライに時計製作を依頼したかと言うと、これはもう有名な話ですが
イタリアは海に囲まれており、当時、敵国のイギリスなどは海から攻めてきます。
そこでイタリア自国の国防の為に海軍に特殊部隊を設けました。
ブラックシール(黒アザラシ)と名づけられたその特殊部隊は、敵艦隊に対して奇襲攻撃をする部隊でした。
どのような奇襲攻撃かといいますと
真夜中、水深10mの深さをSLC(低速魚雷艇)にまたがり相手の艦隊の船底まで進んでいくのです。
SLCは先っぽが爆弾になっており、敵艦の魚雷ネット(魚雷を防ぐ網状のネット)を切りながら進み、相手の船に先端の爆弾をセットしてくるのです。
このような特殊任務を遂行するにあたって、部隊で共通した時間認識が必要ですし、
真っ暗闇(真夜中の水深10mの世界)でもはっきりと時間を読み取れる時計が必要だったのです。
そんな時、白羽の矢がたったのが夜光塗料の特許をとっていたパネライだったのです。
そして1936年の試作品から2年後の1938年に
文字盤のデザインなど改良を加え、実践投与された時計が誕生したのである。
この時に文字盤が二重構造となった所謂サンドイッチ文字盤が採用されました。
現在も受け継がれているパネライの伝統的なディテールのこのサンドイッチ文字盤はなぜに採用されたのでしょうか。
それは夜光塗料が劣化したら下板の夜光を塗りなおして何度でも使いまわしができるように考えられたからです。
また放射性物質のラジウムを原料とした塗料は自発光の為、厚く塗ればより強く光ります。文字盤の上に厚く塗っては字が崩れてしまうので厚く塗っても大丈夫なように考案されたものでもあります。
軍事用品であったパネライの時計は、いわゆる“道具”でした。
コストをかけず何度も使いまわしできる方がよいのです。
さて、さて、1938年にイタリア海軍に実践投与されたパネライですが
その後、軍用であるから徐々に改良されていくわけです。
1940年代にはラグの部分がワイヤーループだったのが改良され太く安定感のあるものへと変わりました。
現行モデルでいうラジオミールとルミノールのちょうど中間のようなデザイン。
このデザイン、いつか出る出ると思っていたのですが、数年前に復刻モデルが発表されるようになりましたね。
そして1949年には新しい蛍光塗料を開発。
ラジオミールがラジウムをベースに作られていましたが
今回はトリチウムをベースにつくられた『ルミノール』というもでした。
このネーミングが現在のモデル名になっています。
1950年代になるとリューズガードを備えたモデルが誕生。
このデザインが現在のパネライの人気モデル、ルミノールへと続くのです。
この50年代のケース形状を模しているのが現行モデルで言われる『1950ケース』というものです。
ラジオミールからの発展してきた背景が見えるケース形状です。
よくよく考えてみると、このリューズガードが付いたモデルって第二次世界大戦後に誕生したんですよね。
イタリア海軍の特殊部隊が活躍したのが第二次大戦なので、そのころ使われたのはこのルミノール系のモデルではない、というのが少し残念な気がするのは僕だけでしょうか?
逆に言ったら、第二次大戦後も甘んじることなく技術的な改良を推し進めてきたところがすばらしいとも思います。
そのようにイタリア海軍の為に時計やらコンパスや水深計などを作ってきたパネライですが平和な時代の到来と共にイタリアの軍備縮小がされるようになってきました。
そのあおりを受けて、パネライもついに民生用に時計を作ることになりました。
1993年から民生用に販売を始めたパネライ。
しかし、それまでの60年間は軍事機密だった時計なので誰も知らないような時計。
ごく一部のマニアが買い求めていたような状態でした。
その頃、パネライの絶大なファンとなったのがシルベスター・スタローンでした。
スタローンは自身の映画で着用をしたり、自分のニックネームがついた限定モデルなどを出したりしました。
それがヴァンドーム(現リシュモン)グループのお偉いさんの目にとまり、1997年に傘下に入りました。
そして1998年のジュネーブサロンで鮮烈な世界デビューを果たしたのです。
1998年と言ったら、僕が時計の販売に携わり始めた年。
時計雑誌を見まくって色々と情報を吸収しまくってた時期でした。
そんな時期のことだから、あの頃雑誌ではパネライが紙面を賑わせていたのが今でも記憶にございます。
僕もパネライ伝説を読みあさっていつか欲しいなぁと思っていたものです。
パネライの鮮烈な世界デビューは一瞬にして時計業界に大きなインパクトを与えましたよね。
当時は40mmでゴツイ時計というイメージでしたが
パネライが世に出たおかげで44mmが標準サイズのようになりました。
この20年弱で何度か40mm以下薄型シンプルウオッチの人気復活がささやかれました。
確かに人気は出たりしましたが、やはりデカ厚時計の安定ぶりは健在で、改めてパネライの凄さを実感します。
それにデビューして20年弱の間こうして安定した人気であり続けるのも凄いと思います。
何十年と市場で安定した人気のある歴史あるブランドならば10年、20年の安定感も不思議ではないですがパネライはブランドの歴史は古くても、世界的にデビューした年月は浅いわけで、
しかも人気が出た一番の理由はあのデザインだと思います。
デザインに火がつき、爆発的に人気が出て、消えていった(消えそうな)ブランドやモデルは色々と見てきました。
それがパネライの場合、一過性の人気で終わらなかったのは
・歴史背景
・プロダクト
の2つがしっかりしていたからだと思います。
歴史に関しては今まで書いてきたような伝説的な人々を魅了する物語があり、
プロダクトに関しては早くから自社開発のムーブメントを発表しており、そのクオリティの高さは時計通をも納得させるものでした。
そして、僕が何よりも凄いと思うのは世界デビュー時から最近までCEOを務めたアンジェロ・ボナーティーの手腕ですね。
長期的なスパンでものを見る戦略が凄いです。
パネライのデザインはラジオミールとルミノールというその2つに的を絞っているのもすばらしいです。
リシュモン傘下に入る前に存在したモデルからしかコレクションを出しておらず、まったく新しいモデルというものを出していません。
これってなかなか出来ることじゃないと思うんですよね。
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さて、そんなパネライですが
現代のパネライの話をする前に
まずは息抜きにこちらをご覧になってみてはいかがでしょうか???
フィレンツェ時計物語。
私の大好きな動画です^^
パネライの魅力が存分に語られています。
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さて、
では現在のパネライのムーブメントについて話します。
パネライは自社で製造しているムーブメントのベースの種類は8つ
P.2000系・・・2005年発表
P.9000系・・・2009年発表(2016年よりP.9010)
P.999系・・・2010年発表(製造終了)
P.3000系・・・2012年発表
P.5000系・・・2013年発表
P.4000系・・・2014年発表
P.1000系・・・2015年発表
P.6000系・・・2018年発表
となります。
【↑P.2002】
2002年より開発に入り、2005年に発表されたP.2002はパネライ初の自社ムーブメントにして、パネライの最上位機種として君臨するムーブメントです。
P.2002をベースに改良を加えたP.2003やP.2004などとバリエーションも豊富になっているのがこの2000シリーズです。
特徴は
・8日間以上のパワーリザーブ(天体時計のみ4日間)
・水平表示パワーリザーブインジケーター
・秒針の0リセット
・GMT表示付
・デイ&ナイト表示
といったものがあります。
もちろん、この機能をささえる構造もかなり骨太な作りです。
両ウケのテンプやフリースプラング、全体を覆う巨大なブリッジなどが良い例です。
パネライの最強にして最高のムーブメント、それがP.2000系です。
【↑P.9000】
P.9000はパネライ第二の自社ムーブメントとして登場しました。P.2000系がどれも100万円以上するハイスペックの高額モデルだったので、一般受けしやすいコストに下げた機種がこのP.9000系です。コストを下げると言うとあまり良いイメージじゃないかもしれませんが、よくよく見ると過剰なスペックがなく考え方によっては一番使いやすいムーブメントです。
特徴は全て3日間のパワーリザーブで自動巻き、日付表示付というところ。
P9001やP9002はそこに0リセット、GMT、パワーリザーブ表示がついたものとなります。
【↑P.9010】
2016年にP.9000の進化形として登場。他の自社ムーブと同様にテンプの受けは両持ち(ダブルブリッジ)となり、耐久性を高めました。
その他の特徴はP.9000と同じで3日間パワーリザーブと自動巻き。
もし、機械式時計を初めて買おうと思ってパネライを探している方にはこのP.9010系は使いやすいと思います!
【↑P.999】
こちらは他のパネライの自社ムーブメントとは趣向のことなるムーブメントです。
アンティークの時計などに多く見られるような古典的な作りと美しさのあるムーブメントです。
他の自社ムーブメントがフリースプラングを採用しているのに対して、こちらは緩急針を採用。しかもスワンネックを使っており、テンプにはチラねじもありで、かなり通好みな作りになってます。
個人的には好きな作りですが、逆に『なぜパネライがこんなムーブメントを?』と思ってしまうようなパネライらしからぬムーブメントでもあります。
まぁ、そのような点が見たら一般的なパネライの持つイメージが好きじゃない方はこのP.999を搭載した42mmのラジオミール(PAM00337など)なんかはお勧めできます。『パネライのごっつい感じは好きじゃないけど・・・』という方にウケのいいモデルです。
ただ、残念なことにこのムーブ搭載モデルは生産を終了、、、、
【↑P.1000】
こちらは薄型の手巻きムーブメント。P.999が生産困難な為に新たに開発されたムーブメント。
42㎜ケースの薄型モデルに搭載されています。
パネライはデザインコードを変えることなく作り続けているので、ケース径や厚さなど実物を3Dで見比べた時の違いによって
モデルの種類を差別化してきています。
そのような手法において、現在のコレクションを展開するにあたって必要と判断したムーブなのでしょう。
薄型ながらパワーリザーブも3日間あり、とても魅力的な作りとなっています。
【↑P.3000】
こちらは47mmサイズの30年代~50年代の復刻モデルを発表する為に開発された機械と言ってもいいでしょう。大型で屈強、高精度設計のムーブメントです。
P.2000系の流れを汲む両ウケのテンプでフリースプラングを採用。香箱は2つなので3日間のパワーリザーブだが充分発展性のある作りをしています。
特徴は手巻きで3日間のパワーリザーブがあること。
ベースのP.3000にGMTやパワーリザーブ表示などを備えたP.3001やP.3002がある。
このような展開の仕方はP.9000系と同じ。
50年代のアンティークなパネライに興味がある方にはこのP.3000系のモデルがお勧めです!
【↑P.5000】
そしてこちら。
搭載されているモデルなどを見る限りでは当初はユニタスムーブ搭載モデル(PAM00112やPAM00111など)に代わるものとして登場したように思われます。
今まではパネライのP.2000系をトップにその下に自動巻きのP.9000、手巻きのP.3000とP.999が位置づけとしてありました。ETA系のムーブメントはそのさらに下の扱いでした。
なのでETA(ユニタス)の後継機と考えると単にこのP.5000はP.3000よりも格下の位置づけにあるムーブメントととなります。
実際にプレートも分割せずに、隠れる部分の仕上げはしていなかったりなど、コストを抑える努力がされています。
しかし、P.5000は8日巻きなのです・・・・
そこがニクイ!!
8日巻きというとパネライの伝統的なパワーリザーブです。
その昔はアンジュルス製の8日巻きを使っていましたが何故8日巻きのものを採用していたかと言うと頻繁なリューズ巻上げによる防水不良が発生するのを避ける為でした。
パネライ初の自社ムーブP.2002が8日巻きだったのもそのような理由から。
P.5000、このムーブもなかなか見逃せないです。。。
【↑P.6000】
2018年に登場したのがエントリー機のP.6000。
P.5000よりもさらにコストを抑え、価格的にもユニタスムーブの代替え機になることを目指して誕生したムーブメント。
パワーリザーブも3日間に抑えています。
3日間に抑えていると言っても3日間もあれば十分でもあり、エントリー機でありながらフリースプラングを採用しているなど
ムーブメントに拘りたい人達にも納得してもらえる作りとなっています。
【↑P.4000】
自動巻きの振り子(ローター)が小さいい”マイクロローター”を搭載したムーブメント。
このマイクロローターを搭載したムーブを発表した時は『なぜ?』と思った人も多かったのではないでしょうか。
一番の理由は薄型の時計に搭載できるようスペースを沢山とって有効活用しようと考えたのが1つ。
もう1つは当初このムーブメントは1940ケースモデルに搭載されているので、1940を他のルミノールやラジオミールと差別化を図る為の手法の1つとして選んだのかもしれません。
ただ、作りは従来のパネライらしく両受けのテンプとフリースプラング。
パワーリザーブも3日間。ツインバレルなのですが、香箱が横に並ぶのではなく重ねているところも特徴的です。
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と、まぁこの短期間でここまでのベースムーブメントを開発するパネライの開発力も凄いですし、
それぞれのコンセプトの区分け方もすばらしいです。
そんな自社ムーブ搭載モデルなら個人的にはやっぱりこのモデルが惹かれます。
PAM00233
44mm
100m防水
1,370,000円+税
パネライの初にして最強の自社ムーブメントP.2002を搭載したモデルです。
パネライ自社ムーブ搭載の初号機ながら、その完成度の高さは素晴らしいものがあります。
それはスペックだけではなく、外装の細部にまでわたるディテールが凄いのです。
風防はサファイアガラスをドーム型にカットしており、斜めから見た時の瓶底のような歪んだ感じはアンティークウオッチのプラスチック風防と通ずるものがあるディテール。
文字盤のインデックスのアラビア数字の大きさのバランスも絶妙。
実は他のモデルのバランスと少し違っていて、このPAM00233は若干数字が大きくなってるんです。
また、手巻きの為、厚さも絶妙なバランスで着けやすいのです。
もう、言葉ではウマく表現できないのですが、このモデルは他のパネライのモデルにはない
何と言うかオーラみたいなものが宿っているように感じます。
じっくりと見比べて、試着し比べてもらうとわかっていただけると思います。
2002年から自社ムーブメントの開発に着手し、2005年に完成し、
それを搭載するモデルとして選ばれたこのPAM00233はパネライのプライドが滲み出ている時計です。
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PANERAI avvelenamento Vol.1 ~パネライの歴史①~
PANERAI avvelenamento Vol.2 ~パネライの歴史②~
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