スリークはウブロ、カルティエ、タグホイヤー、ブライトリング、パネライ、オメガ、グランドセイコーをはじめとした高級時計やメガネなどの正規販売店です。

BREITLING クロノマットの歴史とデザインについて

こんにちは。

 

スリークの飯田です。

 

いつもご覧いただきましてありがとうございます。

 

さて、今回はですね、ブライトリングの人気定番モデル【クロノマット】についてお話をさせていただきたいと思います。

 

Chronomat-44

BREITLING

クロノマット44

A011B67PA

44㎜

500M防水

 

 

ブライトリングの中ではナビタイマーと双璧をなすフラグシップモデル【クロノマット】

 

その現行モデルを今日は深堀りしていきたいと思います。

 

ご存知の方も多いかと思いますがまずはその歴史から。

 

 

 

ブライトリングは1884年に創業

初代はレオン・ブライトリングさん。

懐中時計のクロノグラフを製造していました。

 

 

 

2代目がレオンの息子、ガストン・ブライトリング

彼は1915年に独立したプッシュボタンを装備したクロノグラフ腕時計を製作

1934年にはクロノグラフの第2プッシュボタンを開発し、特許を取得

現在のクロノグラフの時計の原型を完成させた人です。

 

 

 

ガストンの息子ウィリーが3代目

彼がブライトリングとパイロットの繋がりを最も深くさせた人でした。

1942年に回転計算尺付きクロノグラフ【クロノマット】を発表

 

 

 

↑コチラが初代のクロノマット。このデザインは現在の【モンブリラン】へと継承。

 

 

 

そしてさらに1952年に世界初の航空計算尺を備えた【ナビタイマー】を発表

この時計は『国際パイロット協会(AOPA)』の公式時計として採用。

 

世界のパイロット達から称賛を得たモデルでした。

 

この後、1957年にはスーパーオーシャンを発表したり精力的に事業を拡大していきました。

 

 

そして1969年にはホイヤー、ビューレンらと共同で開発した自動巻きクロノグラフムーブメント

『クロノマチック』を発表。

マイクロローターを取り付け

リューズが左側にあるのが特徴。

 

 

 

そんなブライトリングでしたが

1970年代に入ると翳りが見えてきます。

 

1969年に誕生した電池で動くクォーツの時計が70年代に入ると世界を席巻していったのです。

世界中で機械式時計よりも『安くて正確』なクォーツ時計が人気となったのです。

ブライトリングも時代の潮流に乗りクォーツの時計を作るようになります。

 

 

しかし、それでも経営は悪化していく一方。

しかもウィリー・ブライトリングの跡を継ぐ後継者がいなかったのです。

ウィリーはブライトリングのMDを担当していたカスパリ氏を通じて

ある一人の男性を紹介されます。

 

 

 

それが

アーネスト・シュナイダーさんでした。

 

彼は自身で飛行機を操縦するパイロットであり

エレクトロニクスのエンジニアであり

そして【シクラ】という時計ブランドの経営者でした。

 

 

↑シクラは手ごろな価格帯の製造をしていたメーカー。

 

そんなアーネストさんとウィリーさんは何度も会いお互いに話しをしました。

ウィリーは今後の時計業界はさらにクォーツに傾倒していくと考え、クォーツの分野で長けた人材を跡継ぎにしたかったようです。

しかも、自身がパイロットでもあるアーネストなら最適の人材と見たようです。

 

一方、アーネストもだいぶ悩んだようです。

しかし、ブライトリングというブランドに対する憧れもあり

最終的には継承することを決めました。

その際にウィリーには今まで販売されたブライトリングの時計に対してのアフターは請け負わなくて良いと言われたのですが

アーネストはそれも含めて全部継承すると言ったそうです。

そうして1979年にアーネストはブランドを受け継ぎました。

そしてそれを待っていたかのように、同年にウィリーは死去しています。

会社を継承することになったアーネストは1982年に新たな【ブライトリング・ジュネーブ SA】を設立しました。

その彼がウィリーの意思を受け継ぎ

 

新たなブライトリング復興の象徴として狼煙をあげるように発表したモデルが3つあります。

それは

■クロノマット

■オールド・ナビタイマー

■エアロスペース

です。

 

この3機種それぞれに逸話はあるのですが

 

本日はそのなかの【クロノマット】だけについて書きます。(だらだらと色々書いてしまいすみません、、、、)

 

クロノマットはアーネストが『パイロットの為の新しい機械式クロノグラフ』を作ろうと思い開発されました。

当時、イタリア空軍のアクロバット飛行チーム、フレッチェ・トリコローリーが公式時計を公募しており

アーネストはそれに合わせて時計の開発をしました。

何度もパイロット達の元へ足を運び、パイロット達の意見を聞き、

必要とされる機能、ディテールを追求して開発されました。

 

ポイントは3つ

①視認性

②操作性

③耐久性

でした。

 

この3つを象徴するように作られたものの1つが

今日のブライトリングの多くのモデルにも採用されているアイコン的な存在

『ライダータブ』です。

ベゼルの12,3,6,9時方向にある爪がライダータブです。

 

 

このライダータブ搭載したモデルが1983年

フレッチェ・トリコローリに採用されます。

このライダータブは

 

・回転ベゼルで時刻経過を見る際に瞬時に視認しやすいように突起しており(視認性)

 

・パイロットがグローブを嵌めた手でもベゼルを回しやすいように引っかかるように突起していて(操作性)

 

・そして、ガラス(風防)面が直接ぶつかって割れないようにガラスより一段高い位置になっています(耐久性)

 

このモデルは1942年に誕生した名作【クロノマット】と同じ名前を冠することになりました。

このネーミングから見てもアーネストさんのウィリーさんに対するリスペクトが感じられますね。

 

こうして誕生したクロノマットは翌1984年に一般市場向けに発売されます。

プロのパイロットの為に作られたモデルでしたが

イタリアの市場で人気が出ていきました。

↑1984年モデル

 

 

 

↑1992年にはインダイヤルの縁を取るなど若干の仕様変更。

 

 

 

↑10周年を迎えた1994年にはカレンダー表示に枠を入れたり

文字盤中央にギョーシェ彫りが入るなどより一層ディテールに拘りがでてきました。

インダイヤルの表記数字も数が多くなり読み取りやすくなります。

(写真は僕の人生初の機械式時計です(;´∀`))

 

 

 

↑1997年にさらにマイナーチェンジ。

この時はバーインデックスタイプを『クロノマットGT』、

アラビアインデックスタイプ『クロノマット ヴィテス』と呼ばれました。

GTはインダイヤルにフチをつけて視認性をUP。書体が斜めのイタリック書体になっているのが特徴です。

 

 

 

↑そして2000年にはクロノマット2000というモデルで再度マイナーチェンジ。

この時には全てクロノメーター認定を受けており

過去のモデルと比較しても精度が平均的に良くなりました。

クロノメーターは15日間にわたり5つの姿勢差、3つの温度差で精度点検を行い

1日の平均日差が-4~+5秒のムーブメントに与えられる認定書です。

スイスで生産される時計の5~8%程度しか合格しない厳しい基準です。

 

このクロノマット2000までが1984年より続いたオリジナルサイズ(39㎜)の最後となります。

 

 

 

 

↑2004年、クロノマット20周年を機に

クロノマットは大きく変わります。

その名も【クロノマット・エボリューション】

従来のクロノマットよりもケース径が約5㎜UP。44㎜のサイズとなりました。

防水性も100Mから300Mにアップ。

 

 

あらゆるところがエボリューション(進化)したわけですが

個人的に感じる一番の進化はデザインだと思っています。

↑ブライトリングの全製品のデザインを手掛けるエディ・ショッフェルさん。

 

彼はこの大幅なモデルチェンジに際してクロノマットに色気を持たせることにチャレンジしました。

1984年に誕生したクロノマット。

プロの為の計器としてはその時点でかなりの高い水準での実用性を持っていました。

その後、視認性や精度などの面で若干の改良は加えられてきていますが

1984年時点での完成度が高く、これまでのクロノマットを『進化』という表現が出来るほどに作り変えるのは

もはや機能的な面では難しいと考えたのではないでしょうか。

それならば、

機能性だけでなくデザイン性に趣をおいたのも納得できます。

エディはこの大幅モデルチェンジで

クロノマットのあらゆる面に曲線を用いりました。

どのような角度から時計を見ても全体的に丸みがあり、統一感を感じるデザイン。

角をとって全体的に曲線があるから、どのような角度から光りが当たっても光りが乱反射して輝くのです。

この光りの反射をエディ曰く『光りが踊る』と。

彼は光りを躍らせたかったようだ。

 

 

そんな詩的な表現をするエディ・ショッフェル。

彼が次にデザインしたクロノマットが

そう、

2009年にブライトリング初の完全自社開発クロノグラフムーブメント

キャリバー01を搭載したモデル

 

 

 

↑【クロノマット44】の誕生です。

 

2009年5月29日世界同時発売でしたね。

このモデルも前作、【クロノマット・エボリューション】からの流れを汲み

曲線を強調したディテールとなっています。

ベゼルにあったライダータブも突起を無くしてより統一感を増しました。

突起がなくなった分、回しやすさの為にベゼルの回転を1周120ピッチから240ピッチへと変更。

より細かく滑らかな回転になっています。

また、指の引っかかりを持たせるためにベゼルの高さをライダータブを起点としてスロープさせています。正面から見るとわからないが横から見るとわかります。

飛行機のプロペラのような加工。これは非常に難しいです。

 

この加工に対してショッフェルは『光りの遊びによってスチールが歌っているようにしたかった』と言っています。

 

ショッフェルはこのような詩的な表現が好きな人。

 

彼の多くのデザインを見ていくと彼のデザインには全てにおいて哲学めいたような

詩的なような表現がなされていると思うんですよね。。。。

 

 

C1

↑例えばこの文字盤のデザイン。

中央に四角い意匠があります。

 

 

 

 

C1 - コピーこれはなぜかというと

全体的に曲線を強調して美しさを追求しているクロノマット。

しかし、パイロットウオッチであるクロノマットには『力強さ』も必要だと考えて

その力強さを出す為に中央に直線的な要素を組み込んだというわけです。

 

円と線

このような配慮もショッフェルさんらしいですよね。

 

 

 

C2

両脇にあるクロノグラフ30分計と秒針のインダイヤルは上記の四角い意匠の流れで

真ん中から半分に表面加工が分かれています。

C2 - コピー

 

 

 

 

一方、6時方向のクロノグラフの12時間計は3時―9時を結ぶ線で2等分しているのではなく

4等分の処理になっています。

 

C3

おそらく時間の読み取りを考えたら12時位置がスタートなのに

3時―9時で線が引かれているのはおかしな感じになりますからね

 

C3 - コピー

それでこのような分割にしたのではないでしょうか。

 

そして、偶然なのかこの4分割だと

飛行機のプロペラを連想させるような意匠となっていますよね。

似たような4分割と言えばBMWのマークなんかも飛行機のプロペラがモチーフですしね。

 

個人的には

これらの文字盤やインダイヤルのデザインの仕方には『陰陽思想』的なものや

仏教思想のようなものの影響があるのではないかと思っております。

 

理由はですね

ED

こちら、エディ・ショッフェルさんの写真。

 

たしか自宅か仕事場だったかでの写真なのですが

ショッフェルさんの後ろにある壁にかかっているのって

曼荼羅なんではないでしょうか?

 

 

違うかな???

違うような気もしますが、曼荼羅のようにも見えます。

曼荼羅は仏教(密教)ににおいて聖域、仏の悟りの境地、世界観などを仏像、

シンボル、文字、神々などを用いて視覚的・象徴的に表したものです。

曼荼羅には様々な種類(分類)があるのでここで細かく説明は難しいのですが

ショッフェルさんが壁に飾っているのが曼荼羅だとしたら

デザインにもそのような思想、哲学が影響受けていても不思議ではない

なと思うのです。

 

 

近年発表された新作の『ギャラクティックユニタイム スリークT』など

ベゼルに高硬度のタングステンを使用したのも彼なりの理由があって

『現在の社会情勢は非常にアグレッシブな状態である。しかし本来、人々の生活や社会、

人生というものはもっと平和で安寧でなくてはいけない。』

その平和、安寧を時計のベゼルで表現したかったそうです。

 

しかも、その平和、安寧は恒久的なものでなくてはならない。だから高硬度の傷がつかない

タングステンを採用するのだ、と。

 

こういう話を聞くと本当、エディ・ショッフェルさんのデザインって面白いと思います。

もちろん、工業製品としての実用性を追求したデザインがベースにあり

そこに、デザイナーとしての感性だけはなく、哲学的、詩的な思いを込めたデザインとなっている。

 

そんな魅力がおおいに詰まったクロノマット44

 

 

是非ともおススメしたくなる一本でございます。

 

しかも、ブライトリングが完全自社開発ムーブメントを搭載した初のモデル。

ブライトリングというブランドの歴史を今後振り返った時に

必ずやそこに出てくる出来事であり、モデルであります。

そのような歴史的な名作を手にできるのです。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

クロノマットもスペックやディテールなどは雑誌などでもよく目にしますが

その誕生までの背景や、デザインの変遷とそこに込められたデザイナーの想いなどを汲み取っていくととても興味深いモデルだと思います。

ぜひ、気になる方は自分でも調べてみてください!

SHARE