飽和潜水とヘリウムエスケープバルブのお話
こんにちは。
スリークの飯田です。
皆さんも大好き?なダイバーズウオッチ。
そんなダイバーズウオッチを手に取って気づいたことがある人も多いはず。
時計の横に付いているこの丸いボタンのようなもの。
はたまたこのような感じで10時方向にリューズのような飛び出ているもの。
これは『ヘリウムエスケープバルブ』と言います。
これらは何につかわれるのか??
書いて字のごとくヘリウムガスを時計の内部から逃がすバルブなのです。
へっ?と思う方もいますよね。
まぁ、残念ながら一般人が使用することは基本的にございません、、、、
ただこのヘリウムエスケープバルブを装備していることがプロ向けのダイバーズウオッチの証!として選ばれる方もいらっしゃいます。
このヘリウムエスケープバルブは『飽和潜水』をする時に必要となります。
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では、飽和潜水についてご説明する前にまずは減圧症(潜水病)についてご説明を。
あまりにも深いところに潜っていくと水圧が高くなります。
そうなると高圧空気で呼吸することとなり生体組織へ気体が溶け込んでいきます。
その後、海面へ上昇する際に早いスピードで上昇すると
急激な減圧により、生体組織に吸収されていた気体の体積が膨張して気泡となってしまうことがあります。
これが血液中で起こると血管を塞栓し血行障害を起こしたりします。
特に窒素の溶解度は酸素の半分位で、しかも窒素は空気の80%を占めるので、減圧したときに真っ先に気化され、
これが典型的な減圧症の主な原因となっています。
しかも、窒素には『窒素中毒(窒素酔い)』というものがあります。
高分圧(3~4気圧程度以上)の窒素を摂取すると発症する中毒です。
多幸感や精神の高揚感などがあり、酒に酔ったような症状から窒素酔いとも言われます。
中毒そのものはそこまで生命に関わるような危険性は少ないのですが
判断力の低下が事故に繋がる危険性を持っています。
そこで!考案されたのが
『飽和潜水』なのです。
生体組織に吸収されるガスの量というのは一定量決まっており、
一定の圧力下においてはそれ以上は体内に溶け込まないのです。
これを応用して不活性ガスであるヘリウムガスを体内に溶け込ませ、
それ以上は体内に他のガスが溶け込まないようにして潜水するのが飽和潜水です。
この技術を使うことにより安全に100m以上の深海でも作業を行うことができるようになります。
なかには700mの深さでも作業をしたりします。
↑の図が飽和潜水の仕組み
ご説明しますと
DDCというカプセルに入って、そこで潜水士はヘリウムガスによる加圧をします。
加圧する時間は潜る深さにもよりますが数時間から1日近くかかります。
その後、SDC(水中エレベーター)に移り深海にまで行き、海の中へと出ます。
作業を終えた後はまたDDCに入り今度は減圧を行いヘリウムガスを抜きます。
この減圧に関しては10日前後を要します。
このような過程により海面への急上昇をする必要もなく急激な減圧が無い為、減圧症を発症することもなく
窒素を取り込まないので窒素中毒にもならないというわけでございます。
このような大変な過程を経て大深度での潜水が行われるのです。
ちなみに日本ではこのような飽和潜水を行うのは海上自衛隊だけです。
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で、上記に述べた浮上する際の減圧時に
時計内部に入っていたヘリウムガスが膨張して時計の風防が吹っ飛ぶなどの事故が起きる為、
そのヘリウムガスを抜く、バルブが『エスケープバルブ』なのです。
飽和潜水自体は一般的ではないのですが
時計の世界ではエスケープバルブこそが『本物のダイバーズウオッチの証』のごとく
取り付けられているモデルも多々あります。
こちらは自動エスケープバルブを採用しています。
自動なので突起したボタンのようになっていません。
こちらは手動エスケープバルブでございます。
手で回してガスを抜きます。
自動と手動、どちらが良いかはこれまた賛否あります。
手動だと確実に操作ができます。(自動だと、もし故障していてもわかりませんもんね)
一方、手動だとバルブを回し忘れてしまうというヒューマンエラーを発生するというリスクもあります。
と、
真剣に考えてどっちがいいのか?
などと思いにふけるのですが・・・・
『お前には必要ねぇーじゃん!』といつも最後にもう一人の自分が突っ込んでくるのです、、、、
なにはともあれ
オーバースペック、オーバークオリティは男子たるものの大好物だと私は思っています。
特にダイバーズウオッチは水に潜らない人でも
『耐久性』というところに魅力を感じます。
どんなところにでも着けていけそうな安心感が男の道具!という感じがして好きです。
ダイバーズウオッチが気になる方は是非このエスケープバルブに着目してみるのも1つの楽しみかもしれません。
最後に飽和潜水の別な図解のご紹介。
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