【Grand Seiko 特集】文字盤への拘り編 Vol.1
2024.03.23
スリーク新潟、スリーク富士見、スリークEXPOCITY
開催店舗:スリーク新潟 スリーク富士見 スリークEXPOCITY
期間:2024年3月2日(土)~4月7日(日)
【Grand Seiko 特集】文字盤への拘り編 Vol.1
こんにちはスリークEXPOCITY店 です。
いつもご覧頂きありがとうございます。
言わずと知れた、日本最高峰ブランド グランドセイコー
美しい時計を手にした瞬間、貴方はきっとその美しさに魅了されるはず。
文字盤のデザインに強いこだわりを持ち、世界中の多くの時計ファンから指示を得ていますが、 今回はそのこだわりについてお話したいと思います。
独自の文字盤表現を確立したグランドセイコー
文字盤の表面を薄く覆うか、厚く覆うかを決めるのは、メーカーによって変わる。
一般的に、厚く覆うと耐候性は上がるが、繊細なニュアンスは得にくくなる。
対して、薄く覆うと、繊細なニュアンスを得やすいが、耐候性は下がる。
果たして、高い耐候性と繊細さを両立した文字盤はできないのか。
その課題に挑んでいるのがグランドセイコーなのです。
スイスと日本の時計の違いを端的に象徴するのが、文字盤の厚み。
耐候性を重視する日本のメーカーは、一貫して塗膜やクリアを厚くしてきました。
一方、スイスのメーカーは、実用機と見なされるものでさえも、できるだけ文字盤を薄く仕立てようと試みてきた。
文字盤を保護するクリアの厚みを具体的に比較すると、グランドセイコー(以下GS)の文字盤に施されたクリアの厚みは、100~200ミクロン。
これは自動車のボディに吹かれる保護用のクリアよりさらに厚い。
それに対して、実用機とされるブライトリング(文字盤の仕上げはスイスでも第一級だ)は、クリアの厚みは20ミクロン以内。
超高級機ではクリアはいっそう薄くなり、5ミクロン以下という場合もある。
どちらが良いか悪いかではなく、何を重視しているかで、仕上げがまったく違うのです。
しかし厚い文字盤に、繊細なニュアンスを与えにくいのは事実。
そこで、GSのクォーツとスプリングドライブモデルを製造するセイコーエプソン(以下エプソン)は、高い耐候性と高級感の両立に取り組んできた。
現在、エプソンが得意とする文字盤にはふたつある。
ひとつはラッカー塗装を厚く盛って研ぎ上げたいわゆるラップ研磨の文字盤、もうひとつは強い筋目を付けた「厚銀」文字盤。
いずれも昔からある製法ですが、近年技術も大きく進化をしています。
今回はその厚銀ダイアルをピックアップして行きます。
GSらしい銀文字盤。
普通とは違う「厚銀」仕上げによるもので、文字盤の筋目仕上げは、真鍮のベースに直接施す。
鏡面に仕上げた地の上に下地としてニッケルメッキを0.3ミクロン、その上に厚銀メッキを7ミクロン施し、 そこに深さ5ミクロン程度の筋目仕上げを施す。
GSの厚銀仕上げは工夫があり、角度によってGSの文字盤が金色に見えるのは、厚銀メッキの上に0.1ミクロン程度のごく薄い金メッキを掛けている為。
これが角度によって反射し、金色に光るというわけなのです。
こちらは「厚銀」仕上げの文字盤を持つモデル。
その筋目は、地ではなく、銀メッキの上に直接施したもの。
そのため、クリアの厚みを感じさせないほどの繊細なニュアンスをたたえる。
ダイヤモンドカットで仕上げられたインデックスも申し分なし。
(左)厚銀+ラップ研磨+艶消しラッカーの文字盤。
わずかに黄色く見えるのは、銀メッキの上に、ごく薄く金メッキを載せているため。
GSならではの、非常に分厚い印字にも注目。
(右)文字盤製造の工程より。
左は、金メッキをかけ、その上に200ミクロンのクリアを吹いた状態。
右はその表面をごくわずか研ぎ上げた状態である。
一晩置いて溶剤をなじませ、その後少しずつ温度を上げて溶剤を抜くことで、気泡が出ないようにしている。
普通、これだけ厚く盛り上げたかったら、何度も重ねる必要がある。
しかし今のエプソンは、1回の塗りだけで200ミクロンの厚みを出せるようになった。
これは塗料と吹きつけ方法、そして乾燥技術の進歩が可能にしたものだ。完全な艶消しの「ジェットブラック」も技術の進歩の賜物なのです。
とはいえ、文字盤の製造には今なお職人の勘がものをいう。
一例が、塗料の調合。職人が文字盤に吹き付ける塗料を混ぜるのだが、すべてのロットが同じ色になるよう、下地メッキに合わせ、毎回調合を変えているという。
300㏄の塗料に数滴色を混ぜるだけで変わるというから、かなりの経験が必要な作業。
現在、文字盤の新しい製法にも挑戦している。
それが、複数のレイヤーを積極的に使って、奥行きを出すというもの。
耐候性を持たせるための厚重ねを、それ自体深みを与える手段に変えようという試み。
今や1ミクロン以下から、250ミクロンの厚みまでを自在にコントロールするに至ったエプソン。
厚い文字盤は質感に欠けるという認識に挑みさらに新しい次元に向かおうとしている。
(上右)厚銀仕上げの文字盤に筋目を施す過程。研磨剤を溶かした溶剤に、文字盤を浸けて、ブラシで模様を施す。
(上中)上は筋目を付ける前、下は付けた後。すぐ酸化するため、素早く次の工程に取りかかる必要がある。
(上左)塗料の濾過と調合。吹き付ける文字盤のメッキ、塗料の濃さなどを判断して毎回微調整を行う。「300ccに2滴色を加えるだけで色が変わる」ほど繊細な作業である。
(下右)クリアを吹き付ける過程。塗面の均一な仕上がりは、自動化機械が支えている。
(下中)塗装後、文字盤は常温で1日放置される。その後、オーブン乾燥により3~4時間かけて焼結させ、さらに赤外線乾燥機で乾燥させる。
(下左)印字の過程。タンポに使うのは、印字の載りやすいゼラチンである。セイコーエプソンでは5種類の溶剤を混ぜて専用のインクを作る。印刷後、1日放置して自然乾燥する。その後、オーブンで強制乾燥させる。
いかがでしたか。
素晴らしい製品には素晴らしい技術があってこそ。
グランドセイコーの職人のこだわりを見て頂けたかと思います。
次回も文字盤の拘りにフォーカスして参ります。
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