【ブライトリング・ストーリー】~クロノマット~
2018.11.27
スリーク新潟
こんにちは。
スリーク新潟の飯田です。
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さて、そんなわけでして
ブライトリングにまつわる話をということで、
昨日はブライトリングの歴史を象徴するフラグシップモデル、ナビタイマーについてお話しをしました。
本日はブライトリングのコンテンポラリーなフラグシップモデル、クロノマットについて語っていきたいと思います!
クロノマットが誕生するまで
クロノマット。
ナビタイマーと共にブライトリングを代表する2大モデルの1つ。
ナビタイマーが伝統、クラシック
クロノマットは革新、コンテンポラリー
そんな位置づけ。
しかし、ブライトリングの歴史において最初にクロノマットという名称が登場したのが1942年。
1942年
Ref:769
初代クロノマット
このリファレンス769が後のナビタイマーへと繋がり、クロノマットへとも繋がるのです!
なお、クロノマット(CHRONOMAT)という名称ですが
語源は2つの言葉の造語です。
クロノグラフ=CHRONOGRAPH(ストップウオッチ付きの時計)
マテマティクス=MATHEMATICS(数学)
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さて、現在のクロノマットですが
初代のクロノマットは1983年にイタリア空軍のアクロバット飛行チーム『フレッチェ・トリコローリ』の為に作られました。
当時、軍が公募していたそうで、新たに開発したクロノマットが制式採用されました。
この成功を受けて、
翌1984年に一般向けに商品として発売がされます。
と、その前にクロノマットを語るには、ブランドの背景を少し話させてください。
ブライトリングは1884年に創業
初代はレオン・ブライトリングさん。
懐中時計のクロノグラフを製造していました。
2代目がレオンの息子、ガストン・ブライトリング。
彼は1915年に独立したプッシュボタンを装備したクロノグラフ腕時計を製作
1934年にはクロノグラフの第2プッシュボタンを開発し、特許を取得。
現在のクロノグラフの時計の原型を完成させた人です。
3代目はガストンの息子ウィリー・ブライトリング。
彼がブライトリングとパイロットの繋がりを最も深くさせた人でした。
先ほどご紹介した1942年に回転計算尺付きクロノグラフ【クロノマット】を発表したのもこの方でした。
そんなブライトリングでしたが
1970年代に入ると翳りが見えてきます。
1969年に誕生した電池で動くクォーツの時計が70年代に入ると世界を席巻していったのです。
世界中で機械式時計よりも『安くて正確』なクォーツ時計が人気となったのです。
ブライトリングも時代の潮流に乗りクォーツの時計を作るようになります。
しかし、それでも経営は悪化していく一方。
しかもウィリー・ブライトリングの跡を継ぐ後継者がいなかったのです。
ウィリーはブライトリングのMDを担当していたカスパリ氏を通じて
ある一人の男性を紹介されます。
それが
アーネスト・シュナイダーでした。
彼は自身で飛行機を操縦するパイロットであり
エレクトロニクスのエンジニアであり
そして【シクラ】という時計ブランドの経営者でした。
シクラは手ごろな価格帯の製造をしていたメーカー。
そんなアーネストとウィリーは何度も会いお互いに話しをしました。
ウィリーは今後の時計業界はさらにクォーツに傾倒していくと考え、クォーツの分野で長けた人材を跡継ぎにしたかったようです。
しかも、自身がパイロットでもあるアーネストなら最適の人材と見たようです。
一方、アーネストもだいぶ悩んだようです。
しかし、ブライトリングというブランドに対する憧れもあり
最終的には継承することを決めました。
その際にウィリーには今まで販売されたブライトリングの時計に対してのアフターは請け負わなくて良いと言われたのですが
アーネストはそれも含めて全部継承すると言ったそうです。
そうして1979年11月30日にアーネストはブランドを受け継ぎました。
そしてそれを待っていたかのように、同年にウィリーは死去しています。
会社を継承することになったアーネストは1982年4月5日に新たな【ブライトリング・ジュネーブ SA】を設立しました。
その彼がウィリーの意思を受け継ぎ
新たなブライトリング復興の象徴として狼煙をあげるように発表したモデルが3つあります。
それは
■クロノマット
■オールド・ナビタイマー
■エアロスペース
です。
この3機種それぞれに逸話があります。
クロノマットはアーネストが『パイロットの為の新しい機械式クロノグラフ』を作ろうと思い開発されました。
当時、イタリア空軍のアクロバット飛行チーム、フレッチェ・トリコローリーが公式時計を公募しており
アーネストはそれに合わせて時計の開発をしました。
何度もパイロット達の元へ足を運び、パイロット達の意見を聞き、
必要とされる機能、ディテールを追求して開発されました。
ポイントは3つ
①視認性
②操作性
③耐久性
でした。
この3つを象徴するように作られたものの1つが
今日のブライトリングの多くのモデルにも採用されているアイコン的な存在
『ライダータブ』です。
ベゼルの12,3,6,9時方向にある爪がライダータブです。
このライダータブ搭載したモデルが1983年フレッチェ・トリコローリに採用されたモデルとなります。
このライダータブは
回転ベゼルで時刻経過を見る際に瞬時に視認しやすいように突起しており(視認性)
パイロットがグローブを嵌めた手でもベゼルを回しやすいように引っかかるように突起していて(操作性)
そして、ガラス(風防)面が直接ぶつかって割れないようにガラスより一段高い位置になっています(耐久性)
このモデルは1942年に誕生した名作【クロノマット】と同じ名前を冠することになりました。
このネーミングから見てもアーネストのウィリーに対するリスペクトが感じられますね。
こうして誕生したクロノマットは翌1984年に一般市場向けに発売されます。
元々がプロのパイロットの為に作られたモデルでしたがイタリアの市場で人気が出ていきました。
クロノマットの変遷
1984年
Ref:81950
クロノマット
↑途中からウィングロゴへと変更されます。
1992年にはインダイヤルの縁を取るなど若干の仕様変更。
1994年
Ref:A13050
10周年を迎えた1994年には
カレンダー表示に枠を入れたり
文字盤中央にギョーシェ彫りが入るなどより一層ディテールに拘りがでてきました。
インダイヤルの表記数字も数が多くなり読み取りやすくなります。
1997年
Ref:A13050.1
1997年にさらにマイナーチェンジ。
この時はバーインデックスタイプを『クロノマットGT』、
アラビアインデックスタイプ『クロノマット ヴィテス』と呼ばれました。
2000年
Ref:A13352
そして2000年には『クロノマット2000』というモデルで再度マイナーチェンジ。
この時には全てクロノメーター認定を受けており
過去のモデルと比較しても精度が平均的に良くなりました。
クロノメーターは15日間にわたり5つの姿勢差、3つの温度差で精度点検を行い
1日の平均日差が-4~+5秒のムーブメントに与えられる認定書です。
スイスで生産される時計の5~8%程度しか合格しない厳しい基準です。
このクロノマット2000までが1984年より続いたオリジナルサイズ(39㎜)の最後となります。
2004年
Ref:A13356
2004年、クロノマット20周年を機に
クロノマットは大きく変わります。
その名も【クロノマット・エボリューション】。
従来のクロノマットよりもケース径が約5㎜UP。44㎜のサイズとなりました。
防水性も100Mから300Mにアップ。
あらゆるところがエボリューション(進化)したわけですが
個人的に感じる一番の進化はデザインだと思っています。
ブライトリングの全製品のデザインを手掛けるのがエディ・ショッフェル。
彼はこの大幅なモデルチェンジに際してクロノマットに色気を持たせることにチャレンジしました。
1984年に誕生したクロノマット。プロの為の計器としてはその時点でかなりの高い水準での実用性を持っていました。
その後、視認性や精度などの面で若干の改良は加えられてきていますが
1984年時点での完成度が高く、これまでのクロノマットを『進化』という表現が出来るほどに作り変えるのは
もはや機能的な面では難しいと考えたのではないでしょうか。
それならば、
機能性だけでなくデザイン性に趣をおいたのも納得できます。
エディはこの大幅モデルチェンジで
クロノマットのあらゆる面に曲線を用いりました。
どのような角度から時計を見ても全体的に丸みがあり、統一感を感じるデザイン。
角をとって全体的に曲線があるから、どのような角度から光りが当たっても光りが乱反射して輝くのです。
この光りの反射をエディ曰く『光りが踊る』と。
彼は光りを躍らせたかったようだ。
そんな詩的な表現をするエディ・ショッフェル。
そして、彼が次にデザインしたクロノマットが
そう、
2009年にブライトリング初の完全自社開発クロノグラフムーブメント
キャリバー01を搭載したモデル
2009年
Ref:AB0110
【クロノマット44】の誕生です。
2009年5月29日世界同時発売でしたね。
このモデルも前作、【クロノマット・エボリューション】からの流れを汲み曲線を強調したディテールとなっています。
ベゼルにあったライダータブも突起を無くしてより統一感を増しました。
突起がなくなった分、回しやすさの為にベゼルの回転を1周120ピッチから240ピッチへと変更。
より細かく滑らかな回転になっています。
また、指の引っかかりを持たせるためにベゼルの高さをライダータブを起点としてスロープさせています。
正面から見るとわからないが横から見るとわかります。
飛行機のプロペラのような加工。これは非常に難しいです。
この加工に対してショッフェルは『光りの遊びによってスチールが歌っているようにしたかった』と言っています。
ショッフェルはこのような詩的な表現が好きな人。
彼の多くのデザインを見ていくと彼のデザインには全てにおいて哲学めいたような
詩的なような表現がなされていると思うんですよね。。。。
例えばこの文字盤のデザイン。
中央に四角い意匠があります。
これはなぜかというと
全体的に曲線を強調して美しさを追求しているクロノマット。
しかし、パイロットウオッチであるクロノマットには『力強さ』も必要だと考えて
その力強さを出す為に中央に直線的な要素を組み込んだというわけです。
円と線
このような配慮もショッフェルさんらしいですよね。
両脇にあるクロノグラフ30分計と秒針のインダイヤルは上記の四角い意匠の流れで
真ん中から半分に表面加工が分かれています。
一方、6時方向のクロノグラフの12時間計は3時―9時を結ぶ線で2等分しているのではなく
4等分の処理になっています。
6時方向にある12時間計の場合は4分割。
おそらく時間の読み取りを考えたら12時位置がスタートなのに
3時―9時で線が引かれているのはおかしな感じになりますからね
それでこのような分割にしたのではないでしょうか。
そして、偶然なのかこの4分割だと
飛行機のプロペラを連想させるような意匠となっていますよね。
似たような4分割と言えばBMWのマークなんかも飛行機のプロペラがモチーフですしね。
個人的には
これらの文字盤やインダイヤルのデザインの仕方には『陰陽思想』的なものや
仏教思想のようなものの影響があるのではないかと思っております。
理由はですね
こちら、エディ・ショッフェルの写真。
たしか自宅か仕事場だったかでの写真なのですが
ショッフェルさんの後ろにある壁にかかっているのって
曼荼羅なんではないでしょうか?
違うかな???
違うような気もしますが、曼荼羅のようにも見えます。
曼荼羅は仏教(密教)ににおいて聖域、仏の悟りの境地、世界観などを仏像、
シンボル、文字、神々などを用いて視覚的・象徴的に表したものです。
曼荼羅には様々な種類(分類)があるのでここで細かく説明は難しいのですが
ショッフェルが壁に飾っているのが曼荼羅だとしたら
デザインにもそのような思想、哲学が影響受けていても不思議ではないなと思うのです。
もちろん、工業製品としての実用性を追求したデザインがベースにあり
そこに、デザイナーとしての感性だけはなく、哲学的、詩的な思いを込めたデザインとなっている。
クロノマットJSPとは
では、そんなクロノマットですが
現在、日本で非常に人気の高いモデルが『クロノマットJSP』です。
日本側(ブライトリング・ジャパン)がスイスに要望を出し、日本特別モデルとして作ってもらったモデルです。
このモデル、ご覧いただいて先ほど紹介したクロノマット44とベゼルが違うのがパッと見て分かると思います。
このモデルが出た背景には『クロノマット エアボーン』の存在があります。
そこで、まずは
2009年にブライトリング初の自社製ムーブメントを搭載した初号機として脚光を浴びた
『クロノマット44』と
2014年にクロノマット生誕30周年を記念した発売された
『クロノマットエアボーン』
について、比較検証をしたいと思います!
左:クロノマット エアボーン
A005B13MBD
44㎜
500m防水
855,000円(ブレス仕様は960,000円)+税
右:クロノマット44
A011B67PA
44㎜
500m防水
910,000円+税
クロノマット エアボーンは往年のクロノマットのように
ライダータブ(12時、3時、6時、9時位置にある爪)
に数字(15、30、45)が刻印されています。
余談ですが往年のクロノマットと比較すると両者とも飛び出た爪が無くなっています。
元々、ライダータブには
①ガラスを保護する為にガラスよりも一段高くしている。
②グローブをはめた手でも回しやすいように引っ掛かりを持たせる。
③15と45のライダータブを自分で入れ替えて、カウントダウンベゼルとして使用できるようにした。
という意味合いがあり、
これは開発を行っていた当時の社長アーネスト・シュナイダーが
パイロットの意見を取り入れて出したアイデアです。
しかし、①に関しては2004年にクロノマット エボリューションにモデルチェンジした際にガラスがドーム状にせり上がりガラスの方が高くなりました。
理由はクロノマット開発当初よりガラスの強度が増したということと、
斜めの角度でぶつかればライダータブがガラスより高い位置にあっても保護の役には立たないことからです。
それよりも全体的な曲線を強調した美しさを優先させた結果なのです。
そして、②と③に関しては2009年に初の自社ムーブメントキャリバー01を搭載したモデル、
現行のクロノマット44が誕生した際に廃されました。
それは自社ムーブメントを開発したことにより、
新たなステージへと向かう、ブライトリングというブランドとしての意思表示として、
全く新しいクロノマットの開発がポイントだったのです。
②に関しては引っ掛かりを少なくしましたが、
ベゼルをスロープ状にし、
さらにベゼルのギアを120ピッチから240ピッチへ増やし、
回しやすさを損なうどころか、従来モデルより回しやすくしました。
③に関しては、もはやカウントダウン表示を必要とするパイロットも少なく、
あまり意味をなさないとの判断からであったと思われます。
この③の部分を復活(カウントダウンベゼルとしても使用可能)させたのがエアボーンであり、
クロノマットJSPなのです!!
さらに、他の違いを見ていきます。
まずクロノマット44の3時方向の目玉
クロノグラフの30分積算計をご覧ください。
個人的に、赤い線で書いた『0ポイント、9分、10分、20分、21分、29分』の目盛りがないのが
気になる部分でした。
『なんで9分の目盛りがないのに、11分の目盛りがあるんだよ?』とか。
ま、デザイン的な問題なんでしょうけど。
ここまで気にする方はあまりいないのですが
なんか気になってしまうんです。。。
で、次にエアボーンですが
『5分、10分、15分、25分』と数字が記載された箇所だけ目盛りがありません。
個人的にはこれなら、納得できるんです。
ただ、30分の0ポイントだけ目盛りがあるんですよね。
これが何でなのか気になっていたのですが、
じーーーーと眺めていたら、ふと謎が解けました!
30分のポイントを排して、『30』の位置を上にあげると(画像:右)
29分と1分の目盛りが入れられないんですね。
書体をもっと細いものにすれば大丈夫なのでしょうが、この書体だとダメなようです。
なるほど。
次に気になったのが
1分ごとの目盛りです。
クロノマット44とエアボーンを比較すると
エアボーンの方が目盛りが長いので読み取りやすいです。
(個人的にはそもそも、秒目盛りの間にある1/4秒目盛りが不要なんですけどね。)
ただ、エアボーンの方が
28分、29分、31分、32分の目盛りが読み取りづらいのです。
『SWISS MADE』の文字が邪魔してる・・・。
なぜ、ここまで従来のクロノマット44と比較しても『視認性』というものに拘った作りをしているのに
最後の最後でやってしまったのかエアボーンは??
でも、全く28分、29分がわからないというわけではないので、良いのか?
・・・・
などと
こんなことを書きながら、こんな部分は普通の人は気にしないよなぁー
気づいたとしても気にしないよなー
こんなことに拘っている自分がアホみたいだなぁー
あと、両者の違いで分かりやすいのはインデックスですね。
クロノマット44は文字盤の中央に四角い意匠を入れており、
インデックスはその四角を囲むように先がカットされています。
実はこれってすごいことで、インデックスの1つ1つが異なった形状なので、
コストがかかるんですよね。
一方エアボーンは四角い意匠がなく、バーインデックスも通常のカタチ。
夜光はクロノマット44がインデックスの外側の端にあるのに対して、
エアボーンはインデックスの中央に発布されています。
以上、のような違いが両者にあり
エアボーンのディテールを使ったのがクロノマットJSPなのです!!
クロノマットJSP
A001B70PA
830,000円+税
クロノマット44もクロノマットJSPもどちらも魅力的で、どっちが良いのか非常に迷うところだと思います。
まぁ、簡単な答えを言ってしまえばパッと見た目の好みで選んで間違いないと思います。
どちらも素晴らしいモデルです。
なお、クロノマット44は日本ではローマ数字モデルも人気です。
そして、ローマ数字が好きな人には
クロノマット 44 ブラックローマン マザー オブ パール
Ref : S011 B64 PA
1,100,000円+税
日本限定500本
こちらも絶対に気になるはず!!
クロノマット、これだけバリエーション違いで検討できるのも今だけでしょうか。
とても魅力あふれるモデルです。
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